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ニュース: 訪日外国人に高度医療を提供 阪大が「国際センター」設立


2013-05-10

訪日外国人に高度医療を提供するネットワークが関西で動き出す。大阪大学は新しい医療センターを設立。国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)やりんくう総合医療センター(同泉佐野市)と連携し、アジアや中東から患者を受け入れる。高度の医療技術を活用して「医療ツーリズム」を新事業に育て、関西経済の活性化につなげる。

 

中核となる阪大は8日、4月1日付で同大付属病院(吹田市)に国際医療センターを設置したと発表した。中国や韓国、中東から年30~40人の患者を受け入れる。心臓から血液を送り出すポンプ機能が弱った患者に、心筋シートと呼ばれる筋肉の培養細胞を貼る治療などを実施。英語やアラブ諸国の言語に習熟した医療通訳者を雇う。患者の受け入れから治療、治療費の支払いまでの流れを円滑化する。

 これまでも阪大病院の医師が個人で毎年20人程度の患者を受け入れてきた。ただ、言語や文化、法制度の違いから入院中や治療費の支払時に混乱が生じることがあった。

 阪大は中国、韓国、東南アジアを中心に医師や看護師を受け入れ、医療研修も実施する。同大の外国語学部などと連携し、医療通訳者を養成する。将来は海外と共同で臨床試験を進めたり、日本の医薬品や医療機器の輸出を促したりする。

 新センターはりんくう総合医療センターや淀川キリスト教病院(大阪市)と連携する。りんくうセンターでは関西国際空港への近さを生かし、長距離移動が難しい急病患者を治療。淀川病院ではイスラム教徒向けの調理所を作り、中東や東南アジアから患者を受け入れる。大阪駅北側の「うめきた」にも拠点を置く。

 日本政策投資銀行の予測では、医療ツーリズムの潜在市場規模は2020年時点で5507億円、訪問者は42万5000人。医療通訳者が不足するなど課題があり、観光庁の推計では12年は8万~9万人程度にとどまった。

 国内の他地域はこれまで、医療機関が個別に海外から患者を受け入れてきた。地域ぐるみで複数の医療機関が参加する仕組みは全国初という。

 

 

■「医療都市・関西」に厚み 経済界の後押し焦点

 大阪大学の取り組みは関西経済にも一定の追い風になりそうだ。医療などライフサイエンス分野は関西が官民で推進する関西イノベーション国際戦略総合特区の柱の一つだが、これまで認定された同分野のプロジェクトは創薬や医療機器の開発支援が中心。いわゆる医療ツーリズムが加われば「医療都市・関西」の厚みは一段と増す。

 医療ツーリズムは医療法人や製薬業界など医療に直接関連する産業以外にも恩恵をもたらすため、注目が集まっている。関西では南海電気鉄道が2010年に参入。大阪府と大阪市も今年度から、医療ツーリズムの拡大などを協議する有識者会議を開いている。

 経済団体では大阪商工会議所が「メディカル・ポリス形成プロジェクト」を今年度の事業計画に盛り込んだ。医療機器の開発支援で大商はすでに国内有数の実績を持つ。

 ただ、関西経済界は医療ツーリズムに必ずしも積極的でない。医療現場が商業主義に陥り外国人を優先すれば「国民皆保険が崩壊し、患者がデメリットを受ける可能性もある」(大商の手代木功副会頭)からだ。

 日本医師会も反対姿勢で、阪大は今回の取り組みを「医療の国際貢献」と表現した。阪大はイノベーション特区への追加申請する方向で検討しているが、関西経済界の後押しが得られるかどうかは不透明感も漂う。

 

日経新聞 2013年5月9日

http://www.nikkei.com/article/DGXNASHD0801Q_Y3A500C1LDA000/