医療産業の海外戦略コンサルティング企業  ㈱ボーラボ

お気軽にお問い合わせください お問い合わせ 海外医療の求人・就職
海外の病院などをご紹介、まずはご登録ください。
求人フォーム

海外医療機関などご紹介
まずはご登録ください。

求人登録フォーム

ニュース

薬効かぬマラリアに警鐘


2017-08-12

薬効かぬマラリアに警鐘

 

長崎大熱帯医学研究所准教授 リチャード・カレトン氏

 

 世界の熱帯・亜熱帯地域で毎年2億人以上の人が感染するマラリアは発展途上国の発展にとって重いくびきだ。国際協力によるマラリア制圧対策が進むが、近年は薬が効かない薬剤耐性菌が広がり感染防止を困難にしている。長崎大学熱帯医学研究所のリチャード・カレトン准教授はアフリカで新たな耐性菌の出現を報告、その拡大の恐れに警鐘を鳴らしている。

 

 

 マラリアは蚊を媒介にして広がるマラリア原虫が起こす病気で頭痛や高熱、体の痛みなどが主な症状だ。マラリアの中でも熱帯熱マラリアは早期に治療しないと重症化し死に至ることもある。

 

 現在はアルテミシニンという薬を投与して治療する。アルテミシニンは血液中の原虫のなくす効果が高く副作用も少ない。クロロキンなどかつて標準的だった薬が効かなくなった薬剤耐性のある熱帯熱マラリアに効果があるため、現在の治療になくてはならない薬だといえる。

 

 そのアルテミシニンが効かない耐性のあるマラリアがタイとカンボジアの国境地帯で見つかり東南アジアで拡大している。さらに長崎大のマラリア研究チームは中国やタイの研究者らと連携し、アフリカの赤道ギニアから帰国後に発症した中国人の患者から新たなアルテミシニン耐性菌を見つけ、米医学誌で報告した。遺伝子の変異から東南アジアでみられるものとは異なるアフリカ独自の耐性菌だとみている。

 

 耐性菌の出現は、国連をはじめ様々な国際機関や国が展開してきたマラリア制圧プログラムの効力を失わせる深刻な事態だといえる。かつてクロロキンの効かない耐性菌が10~20年ほどの速いスピードで世界に広がったことを考えると、アルテミシニン耐性菌の拡散も予断を許さない。

 

 現場で耐性菌の存在を前提にした対策を講じるとともに、変異の仕組みの解明や新たな治療法の開発を急ぐ必要がある。

 

(編集委員 滝順一)

 

出所:日経新聞