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「医療ツーリズム」:着実に外国人受け入れ数増加か?


2015-11-02

先進国の人々や新興国の富裕層が、自国では不可能な医療、より安いコストの医療を求め、外国に渡航して治療・診療を受ける「医療ツーリズム」。日本が近年どれほどの外国人患者を受け入れているか、正確なデータは残念ながらない。経済産業省が2012年度の推計として、「前年度比5000人増の2万7000人」という数字を挙げているのみだ。

その後の動向について、旅行大手ジェイティービーの髙橋伸佳・ジャパン・メディカル&ヘルスツーリズムセンター長は取材に対し、「実数は明らかにできないが、訪日外国人客の伸びと連動して増えていると考えていただければよい」と話してくれた。訪日客の伸びは、この3年間で2倍以上になっており、同じ比率で増加していると仮定した場合、年5~6万人のオーダーになっていると推計できる。

日本政府が「外国人患者の受け入れ推進」にかじを切ったのは民主党政権時代の2010年。閣議決定した「新成長戦略」で、“戦略分野”の一つに「健康(医療・介護など)」が挙げられ、医療ツーリズムの推進も盛り込まれた。11年には医療渡航者の日本長期滞在や、母国との行き来を可能にする「医療滞在ビザ」を創設。政府の後押しで、外国人患者受け入れの支援組織Medical Excellence JAPAN(MEJ)が立ち上がるなど体制整備が進んだ。

一方で言葉や文化の壁、国民皆保険制度との兼ね合いもあり、国内の医療機関の多くは“国際化推進”に消極的。日本医師会は「医療の非営利原則や、混合診療の禁止などの視点から問題がある」などとして、医療ツーリズム推進に一貫して反対している。

外国人患者受け入れに積極的な医療機関は、経済成長が続くアジア諸国からの潜在的な需要を見越して、医療ツーリズムを今後の病院経営の柱の一つにしたいという狙いがあるとみられる。国内で医療費の抑制傾向が続く中、海外での知名度が高まれば、保険外収入の増加や高額な医療機器の稼働率向上が期待できる。

 

経済産業省が明らかにした、2012年の医療渡航者の国別割合は次の通り。前出の髙橋伸佳センター長は「われわれの場合、中国からのお客様が9割、ロシアが1割弱。健診と治療の割合が半々です。申し込みは企業が中心で、インセンティブツアーに健診を組み込むケースが多い」と話す。

中国からの医療渡航者を積極的に受け入れている病院としては亀田総合病院(千葉県鴨川市)、がん研有明病院(東京都中央区)、日本医科大学健診医療センター(東京都文京区)、聖路加国際病院(東京都中央区)などがある。

亀田総合病院広報企画室の川上理沙さんによると、中国からの来院者は2014年は50人程度だったが、15年は年初から8月までで計108人。12月までの予約を含めると、160 人に達しているという。人間ドック実施のほか、乳がんの診断・治療も多い。人間ドックの費用は1泊2日でおおむね40万円、2泊3日で45万円という。

川上さんは「80%以上の(中国人)来院者にアンケートをとっているが、医療サービスや職員の対応、検診項目については満足度100%。宿泊・食事については満足度90%前後という結果です」と話してくれた。

現在の安倍政権は、「外国人患者受け入れ」を前面に出した前政権の方針を修正。日本の医療技術・サービスの海外展開(アウトバウンド)推進を重視し、2013年6月の「日本再興戦略」では「新興国を中心に日本の医療拠点について、2020年までに10カ所程度創設し、2030年までに5兆円の市場獲得を目指す」と具体的な目標を挙げた。

日本の医療サービスを政府の後押しで積極的に「輸出」することで、国内の医療機器や医薬品、遠隔診断などの情報システムなど、関連する業界の成長を促すのが狙いだ。

東京都八王子市の北原国際病院は、国際協力基金や日輝の資金支援を得て、カンボジアのプノンペンに救急治療病棟を建設しており、2016年2月にもオープンする予定だ。このほか北海道の北斗病院を中心に、ロシアのウラジオストクで現地の医療機関などと合弁で画像診断サービスを提供するプロジェクトが立ち上がっている。

文・村上 直久(編集部)