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ニュース: 医出づる国 国境を越えて(2)患者受け入れ、海外に名乗り


2015-01-22

東京都にある国立成育医療研究センター。日本の小児医療の拠点である同病院で1年前、ロシアから来たムヒトバ・サフィーヤちゃん(1)が母のミラウシャさん(32)から肝臓の一部を移植する手術を受けた。

 

移植技術に期待

 

 サフィーヤちゃんは先天性の胆道閉鎖症。移植が必要と診断されたが、ロシアでは対応できる病院が見つからなかった。そこでミラウシャさんは外国の病院を調べ、移植医療が進んでいるという日本に来た。

 

 母子は術後の経過観察のため、1月下旬まで都内で暮らす。サフィーヤちゃんも順調に回復。ミラウシャさんは「日本に来てよかった」と笑顔をみせる。

 

 日本の一部病院で外国人患者の姿を見かけるようになってきた。海外からわざわざやって来る理由の一つには、日本の高度な医療技術への期待がある。

 

 2014年11月に開業したばかりの病院、神戸国際フロンティアメディカルセンター(神戸市)も生体肝移植など高度医療が売り。1月末までに4人の外国人患者に移植手術を実施する予定だ。

 

 京都大学名誉教授で生体肝移植の権威である同センターの田中紘一院長(72)は「内向きだった日本の医療のあり方を変える必要がある」と語る。

 

 日本の病院は基本的に国内の患者を対象としてきた。その医療費は公的医療保険制度を通して支払われるが、財政難でその支払いは抑制基調。「今のままでは高度医療への投資も厳しくなりかねない」からだ。

 

600万人奪い合う

 

 日本の人口は減り、将来は患者も減る。4年前から外国人患者と日本の病院の仲介業を始めた日本エマージェンシーアシスタンスは「海外からの患者への日本の病院の関心も徐々に高まっている」(国際医療事業部の麻田万奈次長)という。

 

 世界ではすでに年600万人を超える患者が国境を越える。医療を産業としてとらえ、政府と民間病院が一体となった患者の獲得合戦が激しくなっている。

 

 ところが経済産業省の推計によると、日本に来る外国人患者は年3万人弱。言葉の問題もあり、積極的に外国人を受け入れる病院はまだまだ少ない。東南アジアの方がずっと先を行く。

 

 タイのバンコク病院には英語やアラビア語など32カ国語に対応できる医療通訳が常駐する。600ある病室はすべて個室。キッチンやソファを備え、ホテルの客室と見間違えそうだ。

 

 そもそもは国内の患者向けに設立された民間病院だったが、「受診した旅行者や在留外国人から評判が広がった」(同病院の日本人職員、倉田舞さん)。13年の外国人患者数は21万人。全患者の4分の1を占め、売上高では4割を超える。

 

 日本では現時点で病院勤務医が不足気味で、「外国人を診る余裕はない」といった声も根強い。今すぐ大変身とはいかないだろう。

 

 ただグローバル企業の誘致や、20年の東京五輪時には外国人観光客2千万人を目指す国の病院の大半がいつまでも内向きでは心もとない。医療経済学が専門の真野俊樹・多摩大学教授は「外国人向け医療は日本が開かれた国になるために必要」と指摘する。病院も政府もどこまで本気で取り組むのかが問われている。

 

2015/1/22 日経新聞 朝刊

http://www.nikkei.com/article/DGKKASDG14HAF_U5A110C1MM8000/