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ニュース: 【世界に挑む 日の丸医療】新たな息吹(上)職人技が起こす「革命」


2013-11-04

 「ありがとう!」。日本製の見慣れない最新鋭コンピューター診断装置を前に、最初は不安を隠さない患者たち。しかし、検査が無事に終わると、だれもが満足そうに帰っていく。

 ◆治すから防ぐへ

 北海道帯広市で北斗病院などを運営する社会医療法人「北斗」が5月末、ロシアのウラジオストクに開設した画像診断センター。ここではがん、脳血管疾患、心臓疾患の早期発見を目指す「人間ドック」を受診できる。

 「人間ドック」は日本で誕生した予防医療の切り札だ。ロシアに“輸出”した意義について鎌田一理事長は「予防は先制医療。発症前に見つかればそこに医療のエネルギーを注ぎ込める」と強調する。

 「治ればよい」という段階を脱しつつある現代医療。「『治す』から『防ぐ』へ」-。日本では当たり前となった「予防医療」などの得意分野に世界の目が集まる。「日の丸医療」に、新たなブランドが確立されてきた。

 予防医療と並び、日本が得意とするのが、患者の特性に合わせて治す「オーダーメード医療」だ。

 人間のDNA配列を病気予防や治療法確立に役立てるヒトゲノム解析は、その代表格。文部科学省が支援する「実現化プロジェクト」で、47疾患20万人という世界最大規模のバイオバンクを構築するなど基礎研究が進む。

 ◆オーダーメード

 しかし、こうした最先端医療を待つことなく、個々の患者に対応する職人技もある。

 40年前から、個人に合った商品を届けることにこだわってきた義肢・医療器具メーカー「中村ブレイス」(島根県大田市)は、世界最高水準の技術を使い、世界に2つとない人工乳房や義手を作り上げる。シリコーン製の義指ではマニキュアがはげるため、爪だけを別素材で作り、おしゃれを楽しめるようにした。義足カバーは、本人のすね毛を使い加工する徹底ぶり。もはや、医療機器というよりアートである。

 中村俊郎社長が「本当に必要とする人に喜びの輪が広がればいい。ものづくりの強さと優しさを伝えたい」と話す通り、その使い心地と見た目の自然さは世界中の患者にファンを広げている。

 オーダーメードが最も問われる歯科では、中東や中国に拠点を構える「デンタルサポート」(千葉市)が世界最高レベルの日本人歯科技工士の腕前を海外の患者に届ける。

 コンピューターでインプラントなどの技工物が歯型なしに製作できるようになったことから、インターネットでデータを取り寄せ、患者にぴったり合う技工物にして送り返す計画だ。

 手術中の患者のリンパ節を“透視”するカメラは患者の身体的負担が小さく、米国でも評価が高い。

 高知大医学部の佐藤隆幸教授らは、近赤外光線を当てると発光する色素「インドシアニングリーン」(ICG)に着目。モニター上のICGの光を頼りにリンパ節を取り出し、がんの転移を検査する世界初の技術だ。佐藤教授は「リンパ節の位置が正確に分かり、コイン大の小さな傷を皮膚につけるだけで済む」という。

 ◆別の分野からも

 医療とは畑違いの技術も新風を吹き込む。電化製品や自動車部品の試作品を作る「クロスエフェクト」(京都市)は、構造が複雑で難しいとされてきた心臓レプリカのオーダーメード製造に成功した。

 患部や複雑に張り巡らされた血管まで、患者ごとに忠実に再現。ポリウレタン製で弾力が本物に近いことから、竹田正俊社長は「医師は実物を手にする感覚でレプリカを実際に切り、手術のリハーサルができる」と語る。心臓以外の臓器でもレプリカ作りは進んでおり、国内外の医療現場で“革命”が起き始めた。

 ものづくりの技術を医療ニーズに生かす「医工連携」の動きは、さらなる広がりをみせる。

 14学会が集結し、一般社団法人「日本医工ものづくりコモンズ」が立ち上がった。理事を務める早大ナノ理工学研究機構の谷下一夫教授は「医療現場のニーズは患者の声」と語る。

 世界に貢献する「日の丸医療」。その種は、われわれの足元に落ちている。

                   ◇

 「先進国による手助け」から「個々の患者に寄り添う」段階に入った国際医療では、日本人が見過ごしがちな「日本らしさ」が高く評価されている。第3部では「日の丸医療」の新たなモデルと可能性を探る。

 

msn 2013.11.3

http://sankei.jp.msn.com/life/news/131103/trd13110309590009-n1.htm