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ニュース: 医療立国 日本発「ペプチドワクチン」


2013-04-19

■世界に先行 2年後にも「第4の治療法」

 日本発の新薬として、「がんペプチドワクチン」の開発が進んでいる。免疫力を利用して、がん細胞だけを攻撃するため、患者を苦しめる副作用が少ない魅力がある。開発競争のライバルは米国、ドイツ、フランスだが、先行しているのは日本。外科手術、抗がん剤、放射線治療に続く「第4の治療法」が日本で誕生する期待が高まっている。

 日本で行われている有力な治験の一つは、抗がん剤が効かなかった膵(すい)がん患者に対するもので、最終段階の第3相に入っている。和歌山県立医科大をはじめ全国45カ所の施設で実施中だ。順調に行けば、最短で2年後の実用化が見込まれている。

 使われているワクチンは、米シカゴ大の中村祐輔教授が東大から米国に移籍するのを前に、ゲノム(全遺伝情報)解析を応用して開発にあたった。創薬ベンチャー、オンコセラピー・サイエンス(川崎市、角田卓也社長)が治験を主導する。

 膵がんは発見から1年後の生存率が3割弱で、5年生存率も1割に満たない。平成22年の膵がんによる死者は約2万8千人に上る。有効な治療薬が少なく、新薬の登場が待たれている。

 オンコ社は、胃がんのペプチドワクチンの治験も日本、韓国、シンガポールの3カ国で同時に実施している。それぞれ第1・2相の段階にあり、角田社長は「各国のデータを逐次比較しながら、スピードアップさせたい」と語る。共同治験だが、成功すれば日本発の成果となる。

免疫療法の一種で、樹状細胞を利用したワクチンが3年前に米国で前立腺がんの治療薬として初承認され、免疫療法は世界の潮流になりつつある。今月、ワシントンで開催された世界的な学会、米国がん学会(AACR)に参加した中村教授は、「学会では免疫療法が大きな注目を集めた」と免疫療法の国際競争がさらに激しくなることを予想する。

 ペプチドワクチンも免疫療法のカテゴリーに含まれ、そうした新薬をいち早く日本の患者に届けるには強力なシステムづくりも不可欠だ。

 中村教授は「米国はNIH(国立衛生研究所)が司令塔となり、NCI(国立がん研究所)などが基礎研究から新薬を生み出す手法が確立されている」と指摘する。そのうえで「日本の強みは高い研究レベル。世界と伍(ご)していくには、創薬を一貫して進める医療省を創設するなど腰を据えて取り組む必要がある」と訴えている。(大家俊夫)

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【用語解説】がんペプチドワクチン療法

 がん細胞やそれに栄養を供給する血管の細胞の表面に現れるタンパク質の断片(ペプチド)と同じものを人工的に作り、それを含むワクチンを大量に注射する。これにより免疫の司令塔である樹状細胞が異変を感知。異物を攻撃する性質を持つキラーT細胞に伝達し、がん細胞に対抗できるほどキラーT細胞が増加して攻撃を行い、がんを小さくする。患者の免疫力を使うため、副作用がほとんどない。

msn2013.4.19

http://sankei.jp.msn.com/life/news/130419/bdy13041908070005-n2.htm