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世界初!支援ロボットを用いた網膜手術に成功 外科医の10倍にあたる精度で動作が可能に


2018-07-07

侵襲性が低いことで注目されるロボット支援手術。ロボット支援を利用する外科手術といえば、腫瘍の摘出を思い浮かべる医師が多いかもしれません。しかし今回、オランダで開発された手術用ロボットを用いた網膜の手術が英国ではじめて成功し、広く話題となっています。

 

 

 

 

 

 

 


英オックスフォード大がロボット支援手術の治験結果を発表

網膜の上に10ミクロンほどの薄い膜が張り、視力に悪影響を及ぼす黄斑前膜(網膜前膜)。有効とされている治療方法は、その膜を除去する手術です。しかし、的確に膜を切除してはぎ取る作業には高い技術を要します。

英国のオックスフォード大学がおこなった治験は、そうした網膜に張られた膜をロボット支援手術で除去するというものでした。まず1人の患者さんに手術支援ロボットを用いた手術をおこない、その成功を経てさらに5人の患者さんに同様のロボット支援手術を、また別の6人の患者さんには従来通りの手術を施し、精度を比較したのです。

ロボット支援手術においては、外科医が顕微鏡をのぞき、ジョイスティックとタッチスクリーンでロボットを操作し、直径1ミリメートル未満の1つの穴から出入りさせて手術に成功。その結果、ロボット支援手術を施した患者さんのほうが、出血や網膜接触のリスクがおよそ半分で済んだといいます。これほど高い精度を有するロボット支援手術を実際にヒトの目に用いたのは、世界でもはじめてのことです。

人間の10倍という高精度を誇るロボットの登場

今回の治験で使われたロボットは、オランダのアイントホーフェン工科大学が10年かけて開発したものです。このロボットは7つもの独立モーターを搭載しており、1ミクロンという正確さでロボットハンドのような部位を機能させることができます。それによって実現したのが、10ミクロン単位でコントロールできる非常に精度の高い動作です。

ただし、この驚異的な性能を誇る同ロボットも万能ではなく、動作は「上下」「左右」「前後(患者の頭側へ・足側へ)」という3つの主要な方向のみに限られます。とはいえ、この10ミクロン単位という動作精度は、外科医の約10倍に相当するものです。100ミクロンでも髪の毛1本分ほどの幅しかないという事実を考えると、外科医とロボットの技術勝負がいかに高度なレベルのものであるかが想像できます。

開発チームが情熱をささげる、手術支援ロボットの必要性

黄斑前膜の手術において、網膜に張られた除去すべき膜の厚さは、たったの10ミクロンしかありません。そのうえ、麻酔をかけた患者さんの脈動している網膜から、それを慎重に切除しなくてはならないのです。いかにこの手術に長けた外科医をもってしても、手術精度には限界があります。

オランダの眼科医マーク・ド・スメ医師は、そうした現状から手術支援ロボットの必要性を見出し、その開発に情熱を注いできました。2015年には、目の大きさが人間と同等である豚を用い、ロボット支援手術システムの有用性を実証。また、今回の発表内容を見る限り、その安全性はかなり高いと言えるでしょう。

ド・スメ医師の同僚である、英オックスフォード大学のロバート・E・マクレーン教授は、今回の治験において実際に手術をいくつか担当した経験を踏まえて、このようなロボット支援手術が将来的に一般化するのではないかと強い期待を示しています。

日本でも少しずつ導入されてきているロボットによる手術支援。設備投資や新しい技術の習得と安定化にはまだまだ困難な課題があるのですが、精度の高さや侵襲性の低さという魅力があるのも確かです。新しい技術が進歩するにつれ、外科医に求められるスキルは、さらに大きく変化してゆくのかもしれません。