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外国人旅行者の「医療費踏み倒し」が横行…3割が保険未加入、通常医療業務に悪影響の懸念


2017-08-16

外国人旅行者の「医療費踏み倒し」が横行…3割が保険未加入、通常医療業務に悪影響の懸念   

 

夏の行楽シーズン真っ盛り、連日の猛暑にも負けず、主要都市の駅や空港では外国人旅行者の姿を数多く見ることができる。

 日本政府観光局(JNTO)の報道発表によると、「訪日外国人旅行者」は2012年から5年連続で増加し、16年は2400万人を突破。そして、今年は4月の時点ですでに900万人を超えている。20年には東京オリンピック・パラリンピックを控え、訪日外国人旅行者の増加はまだまだ続きそうだ。

 そんななか、外国人が日本滞在中にケガや病気のため、病院で受診するケースも増えている。それに伴い、ここ数年問題となっているのが「外国人旅行者の医療費未払い」だ。医療費を払わずに帰国するケースが増えている。

 

 

外国人旅行者の3割が無保険状態

 

 観光庁の調査によると、旅行中にケガや病気になる訪日客は約4%。2400万人を突破した昨年は、単純計算で1日約2600人に上る。だが、旅行者全体の約3割は旅行保険に加入していないのだ。このことがトラブルの大きな要因になっている。

 団体旅行は保険加入者が多いが、個人客は無保険が目立つという。また、クレジットカードを持っていなかったり、所持金が少ないなどの理由で、高額な医療費が払えずに踏み倒されることもある。

 近畿運輸局が昨年に大阪府で実施した調査では、「訪日客を受け入れた病院の30%で未払いが発生」している。旅行保険に入っておらず全額自費負担となったため、救急病院にかかって1件で約800万円というケースもあった。

 海外では、治療前に医療内容やコストを明示して同意を求める国も多いが、日本にはそうした慣習はない。そのため、治療後に患者が「ここまで治療しろとは言っていない」とクレームをつけて支払いを拒否する事例もあるという。

 患者が帰国した場合、未収金の回収には大きな手間やコストがかかる。交渉のための通訳代や国際電話代、果ては大使館を通じて支払いを請求するなど、日本人が相手の場合に比べて業務量は膨大で煩雑だ。

 国民の保険料や税負担に直接は影響ないが、こうしたケースが増えると病院経営を圧迫する要因になりかねない。

 

 

国がようやく未収金の実態調査に

 

 「観光立国」の実現を目指すなかで、医療現場に影を落としている「訪日外国人の医療費未収金問題」――。しかし、今のところ正確な統計はなく、実態が判明しない。

 7月17日の新聞報道によると、厚生労働省は全国7000カ所の病院を対象に、訪日外国人旅行者の未払いの実態調査に乗り出すことを決定。来年3月までに報告書をまとめる予定だという。

 また、観光庁は一昨年、損害保険会社に対して日本到着後でも加入できる保険商品の開発を働きかけた。保険各社が相次ぎ、訪日外国人向けの商品を発売している。

 たとえば、損保ジャパン日本興亜は昨年9月、個人旅行者向けの保険を発売。英中韓の3カ国語対応の24時間コールセンターを設置し、約800の医療機関と提携し、顧客に33機関を紹介する。

 また、同じく昨年12月に三井住友海上火災保険とあいおいニッセイ同和損害保険が始めたのは、旅館や旅行代理店などの法人向けの旅行保険。英語や中国語など12カ国語の通訳や、医療機関紹介サービスが付き、100万円を上限に医療費を負担するというものだ。

 

 

東京五輪・パラリンピックに向けて迫られる対策

 

 外国人観光客との間で医療費をめぐるトラブルを経験した医療施設では、独自の対策マニュアルを作成したところもある。

 たとえば、医療に特化した通訳を置き、事前に治療法や医療費について細かく説明。カード払いを原則として、頭金をもらうといったことだ。しかし、そうした先進的な取り組みがあっても、未収金をゼロにはできないという。

 一病院でできることには限界がある。外国人観光客の患者数が毎年倍に増えている沖縄県では、行政に対して翻訳機能付きタブレット端末の導入支援や、医療通訳の設置、将来的な病院スタッフの言語教育などが課題として現場から挙がっている。いずれも病院側の財政負担を伴うことから、一定の公的補助を求める声が多い。

 20年の東京オリンピック・パラリンピックでは、一定の期間に住民に加えて多様な国から旅行客が集中する「マスギャザリング」が発生し、通常の医療業務にも影響が出る可能性が指摘されている。

 しかも、熱中症の多発が危惧される真夏だ。言葉の壁がある患者が多数来院したときに、緊急医療体制の質をどう維持していくのか。円滑なコミュニケーションを伴った、適切な医療を提供できる体制づくりは喫緊の課題だ。

 

出所:Business Journal