ヤマトホールディングス(HD)は25日、米医療サービスのカーディナルヘルスと物流分野で業務提携すると発表した。心臓・血管疾患向けの医療器具の輸入から日本国内の配送まで一括受託する。受注センターの運営や在庫管理も担い、カーディナルの日本事業を総合的に支援する。宅配便は人手不足で事業環境が厳しい。企業向けに「物流+α」のサービスを拡大して収益の確保を目指す。
ヤマトHD子会社で企業間物流を手掛けるヤマトロジスティクス(東京・中央)とカーディナルの日本法人、カーディナルヘルスジャパン(東京・新宿)が業務提携した。都内で記者会見したヤマトロジスティクスの本間耕司社長は「ヤマトグループが持つ様々な機能を生かしてカーディナルの日本事業をサポートしたい」と述べた。
米カーディナルは2016年12月期の売上高が1215億ドル(約13兆5000億円)、世界で約4万人の従業員を抱える。心臓・血管疾患向けの医療器具事業は、15年に米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)から19億ドルで買収した。狭くなった血管を広げるステントなどを取り扱う。
カーディナルはこれまで輸入通関や国内配送を別々の企業に発注していた。今後はヤマトが一手に担い、スムーズに配送できるようにする。海外で製造された医療器具を成田空港で受け入れて通関手続きをし、ヤマトの物流施設から全国各地の販売代理店に輸送する。
これに併せてヤマトは注文の受け付けや請求書の発行など受注センターの運営を受託。物流施設では在庫管理や品質検査などの業務も担う。宅配便事業を通じて抱えるグループ会社の機能を生かす。
ヤマトはこれまでも大型物流施設「羽田クロノゲート」(東京・大田)を拠点に医療器具の物流業務を請け負ってきた。今年11月に大阪府で稼働する大型物流施設でも医療器具の物流を手掛ける考えだ。
「グループの成長原資は企業間物流に求められている」(本間社長)。ヤマトの主力の宅配便事業は営業利益が17年3月期に381億円だったが、18年3月期は人件費や外部委託費が膨らみ85%減の56億円を見込む。一方、企業間物流や金融決済など他の部門の合計は18年3月期に前期比4%減の227億円を確保し、宅配便事業を逆転する。
ヤマトは想定を超える荷物の増加と人手不足で悪化した宅配便の収支を改善するため、27年ぶりの全面値上げに踏み切る。だが、人手不足は深刻で人件費の高騰は避けられそうにない。インターネット通販大手のアマゾンジャパン(東京・目黒)など荷物の約9割を占める大口顧客との値上げ交渉も先行きは不透明だ。企業間物流の成否はヤマトの命運を握る。
日経新聞
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