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ニュース:「資源」を生かす(3) 治療方針どうする 裏方が決める 質も高まる


2015-04-17

治療方針や診療体制は医師が決めるという病院の常識が変わりつつある。新たな担い手は事務職員だ。

北海道旭川市の旭川赤十字病院。治療手順や薬の使い方を検討する会議で、医事係長の寺口大さん(37)が医師に尋ねた。「抗生物質の使用量が他の病院より多いのはなぜですか」

 

「医師も納得」

 

 よりどころは過去の診療記録の分析だ。東京の医療コンサルタント会社のシステムを使って全国700病院と治療内容を比較し、投薬や検査方法の見直しにつなげる。例えば、肺がんの治療では、検査の一部を外来に切り替え入院日数と医療費を半分に抑えた。牧野憲一院長は「よい結果が出ているので、医師も納得している」と話す。

 長野県立須坂病院(須坂市)医事課の高野千晶さん(52)は産業医科大(福岡県)が開発したソフトを使い、人口予測などをもとに需要が増えそうな診療科を予測する。同病院では呼吸器疾患の増加が見込まれるため、今年度から専門医を1人増やした。内川利康事務部長は「効率的な医師の配置のために先手を打つ」と意気込む。

 日本の病院は医師をトップとするピラミッド構造で様々な意思決定は医師が主導してきた。「コメディカル」と呼ばれる医師以外のスタッフは従属的な立場にあったが、コメディカルに任せた方が効率が良い分野も多いようだ。病院事務職員の経験がある東京医科歯科大の川渕孝一教授(医療経済学)は「コメディカルが発言力を持つには、説得力のあるデータとその見せ方が重要だ」と話す。

 東京医科大病院(東京・新宿)は毎月、糖尿病患者を対象とした食事教室を開く。患者には食生活の改善と運動が欠かせないが、継続は容易でない。講師を務める栄養管理科・部長の榎本真理さん(60)は「短い診察時間の中で指導してもうまく伝わらない。具体的なメニューを示し治療の手助けをする」と説明する。

 医療の安全でもコメディカルの創意工夫が光る。

 転倒は高齢者が寝たきりとなる要因の一つ。NTT東日本関東病院(東京・品川)では看護師の中尾正寿さん(41)が患者の転倒防止対策の中心メンバーだ。データ分析会社UBICの人工知能ソフトを使い、各看護師が電子カルテに記入した患者の発言内容をもとに、転倒リスクをリアルタイムで把握することを目指す。「早ければ1年後に実用化する」(中尾さん)

 

術後はおまかせ

 

 多摩大大学院の真野俊樹教授(医療経済学)によると、医師からコメディカルに仕事を分散させるのは世界の潮流だ。例えば、米国のフィジシャンズアシスタント(PA)は医師の監督のもとで診察や薬の処方、手術の補助ができる。ユタ州の病院に勤務する日本人移植外科医の藤田士朗さん(58)は「手術後の患者の管理はすべてPAが担当するので助かる」と歓迎する。

 

 独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査によると、日本の勤務医の労働時間のうち診察は6割にとどまり、多くが書類作成などを負担と感じている。コメディカルがもっと表舞台に出れば、医師が診察に費やす時間も増える。医師の数を増やさずとも、医療の質を高める方法はまだある。

2015年4月17日 日経新聞

http://www.nikkei.com/paper/article/?ng=DGKKASDG30H5V_V10C15A4MM8000