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ニュース: 国境を越えて(3)途上国に検査キット 広がる感染症 命救う貢献


2015-01-23
「これで多くの患者を救うことができる」。北海道大の鈴木定彦教授はいま、アフリカ南部の国、ザンビアに思いをはせる。鈴木教授らが開発した結核の検査キットが2月、同国で本格導入される。

 費用は1回約100円と現状の20分の1。現地では従来1カ月ほどかかった診断期間を1日に短縮した。多数の死者を出す「アフリカ睡眠病」の診断もできる。国際協力機構(JICA)などのプロジェクトとして約4年かけて開発した。同国保健省の幹部からは「扱いも簡単だ」と称賛の声があがった。

 

 

結核死者69万人

 

 エボラ出血熱に限らず、アフリカや東南アジアでは感染症が国や社会を脅かす存在になっている。結核による死者は日本では年間2千人ほどだが、アフリカでは約69万人に達する。マラリアでも約52万人が命を落とす。高い医療技術を持つ日本に期待される役割は大きい。

 

 「人材や技術などの面で大きな貢献をなし得る立場にある」。安倍晋三首相は、感染症対策を通じた国際貢献を訴える。13年には途上国での感染症対策支援を目的に、国や国内製薬各社などによる「グローバルヘルス技術振興基金(GHITファンド)」(東京・港)が設立された。

 

 住友化学はマラリア対策用の殺虫剤開発に成功し、性能の“お墨付き”を世界保健機関(WHO)に申請中だ。蚊に効く新たな有効成分の発見は約40年ぶりで、従来の殺虫剤に耐性を持つ蚊への効果が期待される。「何とか利益が出るレベルだが現地の役に立ちたい」。石渡多賀男技術開発部長は力を込める。エボラ出血熱では、富士フイルムHDのグループ会社が開発した「アビガン」が注目された。

 

 グローバル化でヒト・モノの往来が激しくなり、いつ、どんなウイルスが入ってくるか予測できない。地球規模の危機に立ち向かい、自国民の安全も守る。感染症との戦いは、先進国の一員としての責務であると同時に国の安全保障でもある。

 

 

中国も対策組織

 

 同じことを考えているのは日本だけではない。中国は02年、感染症対策の司令塔となる「中国疾病予防制御センター」を立ち上げた。モデルは米国の疾病対策センター(CDC)。年数百億円を投じ、最先端の研究設備を次々導入する。陣容は約2千人にまで拡大した。エボラ熱対策で中国政府が現地に派遣した対策人員は計千人に及ぶ。

 

 「国民の健康を守るのが我々の職務」「米国のCDCと協力し、アフリカ版CDCの建設を支援したい」。高福副所長の鼻息は荒い。

 

 翻って日本。来年度予算案で計上したインフルエンザワクチンの確保やエボラ出血熱対策などの予算は140億円。国立感染症研究所の体制強化も急務だが、現状の研究員約300人体制から大幅増は難しい。

 

 「感染症のリスクと隣り合わせにあることを国民全体が意識し、官民を挙げて備える必要がある」。感染研OBで、WHOで感染症対策にかかわった岡部信彦・川崎市健康安全研究所所長の指摘は、決して誇張ではない。

 

2015年1月23日 日経新聞 朝刊

http://www.nikkei.com/article/DGKKZO82251300S5A120C1MM8000/