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ニュース: 医出づる国 国境を越えて(1)「宝の山」日本 海外が熱視線 製薬大手、大学に拠点


2015-01-20
米ファイザー、独バイエル、英グラクソ・スミスクライン――。世界に名だたる製薬企業が日本を注視している。視線の先にあるのは大学や研究機関だ。
共同研究を提案

 

 バイエルの日本法人、バイエル薬品は昨年、大阪市の本社にスタッフ6人の新部署を立ち上げた。大学に共同研究を持ちかけるのが仕事だ。すでに京都大とは医薬品研究に関する2年間の協定を結んだ。キャンパスにオフィスを設け、定期的に研究内容や進捗状況の説明を受ける。

 

 「まずiPS細胞などの研究を共同で行うことになるのでは」。ドイツ本社のケマール・マリック経営委員会委員の言葉には強い期待がにじむ。

 

 グラクソがパートナーに選んだのは東京都健康長寿医療センター(東京・板橋)。今月、小型機器を体内に埋め込み治療するバイオエレクトロニクス分野での提携を発表した。ファイザーの日本法人も、大学との連携強化に乗り出した。

 

 医療が高度化し、一企業だけで効果が高い医薬品を開発するのが難しくなっている。外部とタッグを組むのは世界の趨勢だ。「日本は大学やベンチャー発の医薬品が少ない。チャンスがある」。ファイザーの医薬開発部門長、原田明久取締役は話す。

 

承認スムーズに

 

 基礎研究における日本の実力は高い。iPS細胞開発など再生医療では世界をリード。2011年までの4年間にネイチャー・メディシンなど主要科学誌3誌に掲載された医学論文の著者は米国、ドイツ、英国に次ぐ。

 

 基礎研究を製品につなげる仕組みも整い始めた。昨年11月施行の医薬品医療機器法(旧薬事法)は再生医療製品のスムーズな承認を可能にした。薬の安全審査を行う医薬品医療機器総合機構は4年後までに、現在751人の常勤職員数を4割増やす方針だ。

 

 イスラエルのバイオベンチャー、プルリステム・セラピューティクスのザミ・アバーマン最高経営責任者(CEO)は昨年、日本市場への参入を決めた。「世界に先駆け、日本で新製品を販売できる可能性が高まったため」という。

 

 多々ある種を芽吹かせる土壌は耕されつつある。後は、どう育て、果実を収穫するか。

 

 再生医療の一人者、中内啓光・東京大医科学研究所教授は13年、米スタンフォード大に研究室を設けた。資金や設備は日本の方が恵まれるが、「米国は斬新な発想を持つスタッフが集まり、研究の自由度も高い」。将来は完全に米国に移る考えだ。細胞シートなどを研究する東京女子医科大の岡野光夫特任教授も米ユタ大学内に拠点を作る。一線の研究者の目には日本の研究開発体制は不十分と映る。

 

 実用化のノウハウで先行する米国との差は大きい。人材育成も急務だ。医療先進国への道はまだ半ばにある。

 

 

 医療分野でもグローバル化は急速に進む。制度や言葉の壁、国境を越えた動きを追う。

 

2015/1/20 日経新聞 朝刊

http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG10HBG_U5A110C1MM8000/