医療産業の海外戦略コンサルティング企業  ㈱ボーラボ

お気軽にお問い合わせください お問い合わせ 海外医療の求人・就職
海外の病院などをご紹介、まずはご登録ください。
求人フォーム

海外医療機関などご紹介
まずはご登録ください。

求人登録フォーム

ニュース

【保健サービスを輸出する ミャンマーの現場から(上)】国境越える感染症との闘いマラリア対策


2014-09-29

民主化の進展で、海外からの投資や企業進出が活発化するミャンマー。一方、軍事政権下で経済が停滞、保健サービスの整備も滞り、感染症のマラリアの拡散を防ぐ対策が国際的課題となっている。人や物の行き来の活性化が期待される「東南アジア諸国連合(ASEAN)経済共同体」創設を2015年に控え、対策が急がれる。

 ◆子供たちに検査

 首都、ネピドーと最大都市、ヤンゴンの間に連なるバゴー山地。竹を組んだ高床式民家が点在するパオ村には、少数民族のカレン族約50世帯が暮らす。マラリア原虫を持つハマダラカが生息し、蚊が媒介するマラリアの流行地域だ。

 長老のティー・ムさん(53)は「若い頃は高熱の原因を誰も知らなかった。マラリアが何かを知ったばかり」と振り返る。

 100を超すとされる少数民族が国民の約3割を占め、国軍と少数民族の武装勢力との間で戦闘が続き、多くの難民が生じた。パオ村も別の所に移住させられていたが、約2年前から戻り始めたという。

 雨季には道がぬかるみ、車が通行できる道路に出るまで徒歩で約1時間。医療機関は遠く、マラリアを治療するのは村民から選ばれたボランティアのリン・ニ・ポさん(19)だ。3日程度の訓練を受け、昨年4月から迅速診断キットによる検査や投薬治療とその報告などを担う。「子供たちに検査をしてあげられて、うれしい」と話す。

 集落の住民によるボランティアは既に約700人が養成され、早期診断・治療で患者が激減している。支援しているのは日本の国際協力機構(JICA)だ。

 ◆住民ボランティア

 患者の調査で、竹や木の伐採など仕事で山に入って感染する事例が多く、マラリア予防の主力である蚊帳の使用が難しいことが判明。山奥で保健サービスを届けるのが困難なうえ、少数民族の居住地のため対策も後回しになりがち。そこで考えられたのが、集落内のボランティアだった。

 03年からミャンマーでマラリア対策に取り組んできたJICAの中村正聡さん(58)は「人が病原体を持って移動し、そこに蚊がいれば感染が広がる。(ASEANが)EU(欧州連合)のようになると、患者の多い所から周辺諸国に入っていく。人が移動しないことを前提とした対策では対応が困難だ」。

 ミャンマーのマラリアの約7割は治療が遅れると死に至る危険のある熱帯熱マラリア。WHO(世界保健機関)の報告によると、マラリア患者数(12年)は約48万人で、タイやカンボジアの10倍超。薬の効きにくい耐性マラリアがタイ・カンボジア国境で出現、ミャンマーでも確認され、封じ込めが世界的課題となっている。

 感染症は一国だけで対応できない。熱帯の感染症とされてきたデング熱は、ウイルスを媒介する蚊の分布が地球温暖化の影響で北上、感染が世界的に広がっている。日本国内での感染例は過去60年以上報告されていないが、日本を旅行したドイツ人がデング熱にかかっていたことが今年1月、判明。日本で感染した疑いも出ている。感染症と闘う開発途上国の保健サービスを支援する活動は、日本人の暮らしの安全にもつながっている。

                   ◇

 ミャンマーでは軍事政権下でも保健分野などの人道支援が続けられていた一方、民主化に伴い医療機器などの輸出先としても注目される。現場を訪ねた。

                   ◇

【用語解説】ミャンマー

 ASEAN10カ国の西端に位置し、日本の約1.8倍の面積に約6000万人が暮らす。約9割が仏教徒。2011年に軍事政権から民政移管された後、欧米などの経済制裁が緩和。国民の約7割はビルマ族で、男女とも民族衣装のロンジー(巻きスカート)を着用している人が多い。

 

2014.8.25 08:30 msn