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ニュース: 【アジアの目】ミャンマー ペ・テ・キン保健相に聞く 医療制度改革


2013-10-17

■戦後復興期の日本モデル

 テイン・セイン政権による民主化と経済開放で、ミャンマーは大きく変化しているものの、公衆衛生や医療制度の整備は喫緊の課題だ。先週、日本ミャンマー協会(渡辺秀央会長)の招きで初来日した、ペ・テ・キン保健相に、ミャンマー医療の課題と今後の取り組みを聞いた。

 --今回の滞在中、新潟、金沢、千葉、岡山、長崎、熊本の国立6大学医学部による医療支援プロジェクトについての協議や、国際協力機構(JICA)や関係省庁との意見交換が行われたが、成果は

 「6大学との医療支援プロジェクトについては、日本側で6大学が関係機関との協議を詰める一方、ミャンマー側も医療関係の各大学やそれぞれの学長と話をする必要がある。ミャンマーが今の時点で必要とする分野と、日本側が得意とする分野をきちんと合わせる必要がある。予算的には2014年末にはプロジェクトを始める予定だ。基本的な合意は得られたが、詳細はこれから詰めていく」

 ◆まずASEAN水準

 --ミャンマーは第二次世界大戦後、アジアのなかでも医療をリードしていたとされる。今後目指す医療水準とは

 「医療の質を高めていくのに終わりはない。いつまでもゴールに達することはないが、どんどん(医療制度の)整備を進めていかなければならない。経済成長で今後は裕福な人も増え、高度医療に関する要求も増えるだろう。医療技術も進化していく。その技術を利用し、すばらしい医療をやっていかねばならない。ミャンマーの国民がそのとき、最も必要としている医療を求め続けていかないとならない。現状、ミャンマーの保健医療分野には、いろいろ欠点があり、課題もたくさんあると認識している。段階的には、まず近隣の東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国と同じような基準にまで達するように持っていく。その後、医療を先端化したり、国民の医療に対する知識を高めつつ、医療技術を高めることなどを継続してやっていかねばならないと考えている」

 --低所得者層や地方での医療の充実も必要だ

 「ミャンマーは、1948年にイギリスから独立し、88年までは無料の医療制度を導入し、国立の病院やクリニックなどに来た患者からは一切、金を受け取らなかった。しかし、90年以降は経済制裁や国際社会からの協力が減ったことで、国内の経済状況も変化し財政が悪化したため、その後、国民に費用を負担してもらうことになった。病院設備だけでなく、医者や看護師の人件費もかかるので、そういうものに割り当てるために負担をしてもらった。しかし、現在は医療を重点分野として、予算を使っていこうというのが、国の政策となっている。10年度と比較し、12年度の医療予算は4倍になり、13年度は7倍まで医療予算を増大した。国立病院などで最低限、必要な治療を無料で受け、薬を配れるようにするために予算を拡大させている。心臓病やがんなどの高度医療では金をもらうが、救急医療についても国立病院では無料でできるよう、予算を増やしている」

 --少数民族地域での医療はどうか

 「ミャンマーでは医療が行き届いていないところが3つある。1つ目は地方の小さい村。2つ目は山岳部や国境地帯。そして3つ目が大都会でも郊外やスラム街だ。今後はこれら3つに重点的に医療が行き届くようにしていく。病院建設だけでなく、人材を育成しマンパワーを増やす取り組みを行っている」

 ◆難しい国民皆保険

 --日本政府からの協力が必要な分野は、ほかにどのようなものがあるか

 

 「ミャンマーの医療制度はたくさん勉強しなければならないことがある。一つの国だけでなく、いろいろな国からさまざまな制度を勉強する必要がある。一国の制度を丸ごとコピーするのではなく、各国の制度を組み合わせて、ミャンマーに一番適切な制度にしていくことが最適だと思っている。現在の日本の医療保険制度はすばらしいが、現時点の制度はミャンマーとのギャップが大きいうえ、国民の収入構造も全く違う。40年~50年前に日本の戦後復興が始まったころ、日本にも低所得者がたくさんいて医療保険制度を始めた当時のやり方を勉強したい。ミャンマーでは定期的な収入がある人は3%しかいない。97%は日当などの臨時給だ。このため、国民皆保険ではなく、いろいろな人に合わせた何種類かの保険制度を導入する必要があると思う」(編集委員 宮野弘之)

sankeibiz 2013.10.17

http://www.sankeibiz.jp/macro/news/131017/mcb1310170502011-n1.htm