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ニュース: 【世界に挑む 日の丸医療】第2部 官僚たちの模索(下)オールジャパンで戦う


2013-09-29

 「われわれ製薬企業は、途上国でも患者ニーズを満たしたいという情熱を持っていた」。6月1日に横浜市で開かれた「グローバルヘルス技術振興基金(GHIT)」の設立会見で、武田薬品工業の長谷川閑史(やすちか)社長は熱く語った。

 ◆新たな支援モデル

 GHITとは、日本の製薬5社と米マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏の財団が資金を出し合い設立された新たな支援モデルである。先進国での需要が少ないとの理由で行われてこなかった熱帯病などの治療薬開発を、途上国向けに進めようというのだ。

 地球上の全ての人が基礎的な保健医療サービスを受けられる「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)」を“日本ブランド”として主流にしたい。政府は5月、こうした構想を「国際保健外交戦略」としてまとめた。GHITはその目玉の一つである。

 それ以上に、日本政府にとってGHITが意義深いのは、国際保健分野で外務省と厚生労働省が手を結んだことだ。

 ◆省庁の壁を崩す

 GHITのアイデアを出したのは日本の製薬2社の幹部だ。ビル・ゲイツ氏も「いい話だ。資金を出そう」と快諾したものの、日本政府の縦割り行政をどう打破するかが課題として残されていた。特に外務省は「こんなことできるのか」と半信半疑で、省内手続きが一向に進まなかった。

 汗をかいたのは国際保健に取り組み、外務、厚労両省に人脈を持つ自民党の武見敬三参院議員である。当時は民主党政権だったが、武見氏が落選中であったことが幸いした。旧知の小宮山洋子厚労相や玄葉光一郎外相(いずれも当時)らに働きかけ、「本当に実現するとは誰も思っていなかった」(厚労省幹部)という省庁の壁を崩した。

 GHITは、政治家が“やる気”を示せば、バラバラな官僚を束ねられることの証明でもあった。

 各省が“一枚岩”となることなく見切り発車した安倍晋三内閣の国際医療展開。だが、官僚たちは戸惑いながらも模索を始めている。

 5月28日、大分県佐伯市にある医療機器メーカー、川澄化学工業の佐伯工場に、インドやマレーシア、南アフリカなどの保健省、病院の関係者十数人の姿があった。血液や血管関連の医療機器メーカーが集まる大分、宮崎両県が輸出拡大につなげようと企画したセミナーに参加したのだ。

 セミナーは経済産業省ではなく、外務省が深く関わったものだった。国際協力機構(JICA)が政府開発援助(ODA)予算で支援したのだ。

 外務省は国際機関で活躍する日本人を増やす計画も立てている。3月には「世界基金」のナンバー2ポストである戦略投資効果局長ポストに国井修医師を送り込んだ。

 ◆「第2のGHIT」

 一方、民間先行で盛り上がりをみせているのが、米国立衛生研究所(NIH)に倣い、優れた医療関連技術の研究開発を支援する「日本版NIH」構想だ。経産、文部科学、厚労3省にまたがる医療分野の研究開発について、内閣主導で一元的に進めようというのである。

 今月13日に日本製薬工業協会(製薬協)が開催したセミナーは、会場に入りきれないほどの盛況となった。日本版NIHが掲げる「革新的な医薬品の開発」は、製薬会社や研究機関にとって悲願だからだ。

 独立行政法人「医薬基盤研究所」の榑林(くればやし)陽一理事は「商品化を目指す製薬会社と基礎研究を行う大学の研究室の間には、十分な連携ができていなかった」と指摘する。日本版NIHによって3省の壁が取り払われれば、国際市場で求められる医薬品情報を素早く共有でき、数多くの研究からビジネス化可能な“原石”を見つけ出せるとの期待である。

 これには、省全体としては医療の国際展開に及び腰の厚労省も「ただ指をくわえてみているわけにはいかない」(幹部)と前向きな姿勢を見せる。

 「オールジャパン態勢で、世界で戦える力をつけなければならない」。ほとんどの官僚が感じていることだ。だが、意識がただちに変わるわけでもない。製薬協のセミナーで講演した厚労省幹部の説明は、厚労省所管の予算にとどまり、資料は厚労省と文科省で色分けされていた。

 

 「第2のGHIT」は実現するのか。官僚の手探りは始まったばかりだ。

 

msn 2013.9.29

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130929/plc13092910400002-n1.htm