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ニュース: 【世界に挑む日の丸医療】第1部 積み上げた実績(3)感染症防止 光る実直さ


2013-09-29

 「この国では何とか検体が取れますように」-。6月、世界保健機関(WHO)のメディカルオフィサー(医務官)、進藤奈邦子(なほこ)(50)は祈るような気持ちで北アフリカ・チュニジアに降り立った。

 致死率の高い新たな感染症「MERS(中東呼吸器症候群)」が、アフリカで初めて確認されたのだ。

 診断法や治療法の確立には、患者の血液や尿などの検体が欠かせない。「何としても世界の研究室とつなげなければ」。強い思いが、進藤を感染症の現場へと突き動かす。

 あのときもそうだった。「患者情報を出してください。世界中の科学者が待っているんです」。2006年1月、進藤はトルコの病院で声を荒らげていた。

 鳥インフルエンザが疑われる患者が発生。ニワトリとの接触はあったのか、家族など近親者だけの感染なのか。患者情報が今後の流行の予測材料となる。しかし、病院側は「私たちがやりますから」とにべもない。

 「私たちはあなた方をサポートできる。今回の症例が、世界的な流行につながるかの基準になる。どうか教えてほしい」。実直な交渉に、院長が口を開いた。「全ての症例について、あなたたちと話し合おう」

インフラの底上げ

 国際化が進む現代、感染症は一国で対応できる問題でなくなった。いかに封じ込め、治療薬を開発して患者に届けるかで被害規模は大きく変わる。ところが、情報の架け橋役であるWHOといえども、該当国の許可なしに調査はできない。

 感染症が発生した現場は混乱し、国の保健システムの脆弱(ぜいじゃく)さも露呈するため対応は遅れがちだ。進藤は「弱い部分を表に出したい国はない。私たちは問題を暴きに行くのではなく、その国に役立つ情報提供やインフラの底上げをするのだと分かってもらうことが大切だ」と熱く語る。

 進藤が、国立感染症研究所からWHOに派遣されたのは02年。途上国の母子保健など中長期的な仕事が主だったWHOが、世界レベルの感染症に対応するようになった時期だ。

 鳥インフル、SARS(新型肺炎)、エボラ出血熱、新型インフル。多くの現場で情報を集め、流行を食い止めた。進藤ら日本人スタッフが培ってきた人脈と日本人ならではの信用力は、いまやWHOにとってなくてはならない存在となっている。

一緒に考える姿勢

 結核対策に従事し、厚生労働省に出向中の錦織信幸(41)も実直な対応で成果を挙げている。

 10年11月、錦織がモンゴルの刑務所に結核対策評価に行ったときのことだ。過去に欧米から来たWHO職員の評価では、感染防止対策の成果はさほど出ていなかった。だが、錦織が現地の職員とデータを解析し直すと、10年間で患者が4分の1に減っていた。

 過去のWHO職員は、できていないところを指摘するばかりで、効果が上がっているところに目が行っていなかったのだ。

 「行政に助言するのがWHOの仕事。でも上から言うだけでなく、現地の人と一緒に何ができるかを考える姿勢が必要だ」。錦織は肝に銘じている。

 進藤は日本人がもっとリーダーシップを取るべきだと考えている。いま取り組んでいるのは、現場と世界の研究室とのネットワーク化。「日本車や家電などの高品質なイメージからか、日本人はどこに行っても大事にされる。感染症は日本が伝統的に強い分野だ」

 WHOの専門職員2500人のうち日本人は41人(12年末現在)。世界4位の資金提供国としては寂しい数だが、相手の立場になって考える日本流は感染症と戦う世界の現場で確実に“武器”となっている。(敬称略)

 

msn 2013.8.30

 http://sankei.jp.msn.com/life/news/130830/bdy13083013130001-n1.htm