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ニュース: 【世界に挑む 日の丸医療】第1部 積み上げた実績(2)「魚の釣り方」を教える


2013-09-29

 カンボジアの首都プノンペンに、「ジャパン・ホスピタル」と呼ばれる近代的な病院がある。日本の無償援助で完成した国立母子保健センターだ。

新生児守る総本山

 年間6千~7千件の分娩(ぶんべん)を扱うほか、全国の助産師の教育や研修、育成も行う。妊産婦や新生児の健康を守る“総本山”である。

 日本がカンボジアで母子保健の支援を開始したのは1992年。90年に10万人当たり900人だった妊産婦死亡率は、2010年には206人まで減った。

 これだけの実績を挙げた秘密は、継続的で総合的な“日本流支援”にある。日本の支援にはかつて「病院を建設して終わり」という時代があった。だが、現地の人々が使いこなせなければ、立派な設備も宝の持ち腐れ。そうならないように、国立国際医療研究センター(NCGM)が、日本政府の国際医療貢献にあたる専門家を派遣し続けてきた。

 現地で母子保健改善プロジェクトのチーフアドバイザーを務める小児科医、江上由里子(50)もNCGMの所属だ。日本が果たしてきた役割について、江上は「妊娠・出産に必要な知識や技術を伝え、病院の管理方法や助産師の教育・研修システムを現地の人々とともに構築してきた」と話す。

 病院建設から人材育成にまで関わる“日本流”を、保健省次官のエン・ホットは「釣りざおを与え、魚の釣り方を教えてくれる援助」と例える。「私たちが何を求めているかを調査し、私たちと話し合い、決まった約束をしっかり守ってくれる」

「新しい国づくり」

 こうして勝ち得た信用力は、カンボジアの「国づくり」につながった。

 医師でNCGM研修企画課長の明石秀親(55)が思い起こすのは、10年のカンボジア保健医療人材プロジェクトだ。

 同年10月、窓もない保健省の会議室で、明石は人材育成部長のケット・ポンらと向き合っていた。看護助産教育の課題は、大卒資格を持った看護師がカンボジアには4人しかいないことだった。「学士号も持たない教員が教えるのか」。学生からも疑問の声が上がっていた。

 カンボジアには看護師や助産師を認定する法律もない。法整備には時間がかかることを説明すると、ケット・ポンから予期せぬ言葉が返ってきた。「国の根幹になる枠組みを日本とつくりたい」

 明石は日本が信頼されたことがうれしかった。「われわれは新しい国づくりに関わっている。明治期のお雇い外国人と同じだ」

「地方貢献する番」

 カンボジアの隣国ベトナムでも「国づくり」に日本人医師が深く関わる。

 ベトナムの課題は大病院の医療水準を地方にも広めることだが、保健省の常駐スタッフとしてベトナム政府に入り、指導やアドバイスを行ってきた。

 NCGMの専門職だった外科医の秋山稔(59)が保健省アドバイザーを務めたのは07年10月からの2年間。「心電図などが読めない医師もいたし、技術指導で『そんなことは、ベトナムではできない』との反応が返ってくることもあった」と振り返る。

 しかし、日本の援助で建てられたチョーライ病院の医師らが、半世紀にわたる日本の地道な貢献を覚えていた。「『これまで日本が自分たちのために支援してくれた。今度はわれわれが地方のために貢献する番だ』といって熱心に取り組んでくれた。日本の思いがベトナム人たちにも伝わった」と秋山は実感する。

 「あなたは古い体質だった外科を変えてくれた」。病院責任者たちの言葉で苦労が吹き飛んだ。(敬称略)

 

msn 2013.8.29

 http://sankei.jp.msn.com/life/news/130829/bdy13082908350002-n1.htm