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ヤフーやDeNAが医療に取り組む理由 ビッグデータが変える新時代のヘルスケア


2016-06-28

ビッグデータ解析技術がヘルスケアの分野にも進出している。日本ではヤフー <4689> 、ディー・エヌ・エー <2432> 、NTT <9432> などがこの分野へ進出し、海外ではGoogleなどもこの分野へ注力している。このような医療ビッグデータは大きなビジネスにつながるのだろうか。

ビッグデータ解析技術を医療分野に活用

遺伝情報、活動量や脈拍などの生体情報のビッグデータを解析する技術が、医療やヘルスケアのあり方を変えつつある。さまざまな病気にかかるリスクを推定して適切なヘルスケアを選べたり、健康診断の結果を過去のビッグデータと照らし合わせて、医師の診断を促したりといったことが期待されている。

特に注目されるデータが遺伝情報で、すでにヤフーは遺伝子検査やセンシングデバイス(体組織計など)にもとづいて生活改善助言サービスなどを行うHealthData Lab事業を開始。今後、オーダーメード医療の実現を目指すという。

またディー・エヌ・エー(DeNA)は東京大学医科学研究所と連携し、一般消費者向け遺伝子検査サービス「MYCODE(マイコード)」を開始。体質の遺伝的傾向、がんや心筋梗塞、脳梗塞などのリスク傾向を知ることのできる遺伝子検査サービスを提供している。

このほか生体情報に注目したものとして、NTTとNTTドコモ <9437> 、東レ <3402> による取り組みがある。この3社は着るだけで心拍数や心電波形が測れる機能素材「hitoe」と生体情報計測用ウエアを発表。トレーニングアプリ「Runtastic」と連動して運動中のデータを蓄積できるサービスを提供している。

このような動きに関連して、ビッグデータの入り口となるさまざまな生体センサーの開発も盛んになっており、NTTは指に装着する小型の血流センサーを、東芝 <6502> はゲルパッドで胸部に張り付け、心電位や脈波、皮膚温、体動を測定できる生体センサーを発売している。

医療分野に特化した人工知能「DeepMind Health」

ビッグデータ技術を支えるIT企業もこの分野へ強い関心を示している。たとえば、どの病院にも過去のカルテや画像データ(レントゲンやMRI画像)が大量に存在しているが、そういったデータを有効活用する上でIT企業の協力は欠かせない。

たとえば、Googleは人工知能DeepMindのヘルスケア分野への応用へ今後注力すると発表している。医療分野に特化した「DeepMind Health」では、イギリスの国営保険サービス(NHS)やロンドンのロイヤルフリー病院などの医療機関と協力して、モバイルアプリ「Streams」を開発。これは、早急な処置が求められる急性腎障害の状態を医師や看護師がすぐに判断できるよう支援するものだ。

本来なら膨大な症例と付き合わせ、時間をかけて検討するものを、まず患者の状態をビッグデータと照らし合わせて素早く判断する。そして緊急度の高そうなものを医師や看護師が気づきやすくすることを目的としている。試用テストに参加した現場の医師からは、Streams が判定した患者の半数以上においてより良い処置をすることができたという評価が出ている。

同様の試みとして日本でも、富士フイルム <4901> が類似症例を検索するシステムを開発している。「SYNAPSECase Match」と呼ばれるそれは、レントゲンやCT画像の診断時に、過去の症例データベースから特徴が似たものを瞬時に検索し、似ている順に表示することで医師の診断をサポートする。試用テストでは、医師の診断精度を13ポイント向上させられたという。

医療ビッグデータ関連で伸びるビジネス

今後、医療ビッグデータ関連で伸びていくことが予測されるビジネスとしては、医療機器メーカーやヘルス&ビューティケア企業が考えられる。またOTC企業などを対象とした「医療関連業界向け医療ビッグデータ分析サービス」や、病院向けにレセプトやカルテ、DPC(後述)のデータを管理・分析する「病院向け診療データ分析ツール・DPCデータウェアハウス」もあるだろう。さらに、製薬会社が医師や医療従事者へ向けたプロモーションサービスの「医療向けe-プロモーションサービス」といったものも期待できよう。

なお現在、日本では国によるビッグデータ収集も進んでおり、それには、「介護保険総合データベース」「レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)」「DPC(Diagnosis Procedure Combination:診断と治療内容の組み合わせに基づく患者分類)」などがある。

このうちDPCには、実施された検査や治療内容、診断名などが記されていることから、病院ごとの治療の方向性を見極める材料や、地域の複数の病院をどう協同させれば住民のニーズにかなうかを検討する材料になる。これも活用が期待されるビッグデータだ。

こうした潮流の中、これから課題となってくるのは、さまざまな医療ビッグデータをどうやってつないでいくかということ、そして、これを分析するスペシャリスト(ヒューマンデータ・サイエンティスト)の養成だ。そのような課題に対応することを目的として、2014年11月には『日経メディカル』などが中心となって「医療ビッグデータ・コンソーシアム」が設立された。

ビジネスとして未知数の部分もあるが、大きな市場となる可能性は十分にある。これまで救えなかった命が救えるという点でも、医療ビッグデータ活用のこの潮流は大変意義深い。(ZUU online 編集部)

https://zuuonline.com/archives/111573