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ニュース: 医出づる国 国境を越えて(4)痛みはキリキリ? 「おもてなし」カギ握る通


2015-01-26

 聖路加国際病院(東京・中央)の「国際係デスク」は病院に入ってすぐの総合受付にある。外国人の患者を案内する専用の窓口で、英語や中国語、ロシア語など5カ国語で応対。必要なら診療時の通訳もする。院内の案内は4カ国語で表記し、ホームページを2013年から8カ国語で読めるようにした。

明治期の外国人居留地に米国の宣教医師が前身を創設した同病院は、国際化対応が最も進んだ病院の一つ。外国人が年間440人入院し外来で約1万8600人訪れる。医事課の原茂順一マネジャーは「スタッフで対応できない場合は24時間対応する電話通訳会社を使う」と説明する。

 

五輪へ拠点拡大

 

 日本で暮らす外国人は200万人を超え、観光や仕事で訪れる人は年間1340万人に達した。だが、同病院のように、外国人が安心して受診できる医療機関はまだ少ない。これでは5年後に迫った東京五輪・パラリンピックのホスト国として心もとない。政府は拠点となる病院を20年までに全国に30カ所設ける計画を掲げ、昨年7月に閣議決定した「健康・医療戦略」に外国人向け医療サービスの拡充を盛り込んだ。

 最大の障壁が「言葉」であることは明白だ。医療用語はただでさえ分かりにくい。外国語に訳すには専門のトレーニングが必要になる。こうした中、存在感が増しているのが、医療通訳者だ。厚生労働省研究班が13年10月、全国の病院を対象に実施した調査(766病院回答)でも、約73%が外国人患者の受け入れに向けた課題に「医療通訳の養成」を挙げた。

 約20万人の外国人が暮らす愛知県。12年に県が立ち上げた「あいち医療通訳システム」は画期的な行政サービスとして、各自治体の注目を集める。

 英語や中国語のほか、ポルトガル、スペイン、タガログの各言語の医療通訳を養成・認定し、医療機関の要請を受けて派遣する。専門会社による電話通訳にも応じる。通訳者は延べ217人に達し、利用する医療機関も当初の54施設から82施設に増えた。

 国立病院機構名古屋医療センターの横幕能行医師は「痛みの症状でも、キリキリ痛むのかシクシク痛むのかという微妙な違いを通訳してくれる。患者の出身国の医療文化や慣習も理解している」と評価する。

 

翻訳アプリ投入

 

 IT(情報技術)を利用した通訳システムも実用段階に近づきつつある。

 1月中旬、東京大病院(東京・文京)の総合受付に見慣れない装置がお目見えした。独立行政法人、情報通信研究機構(NICT)が開発した音声翻訳アプリ「ボイストラ」で、外国人患者と職員がリアルタイムで会話できる。

 「やっと世に出せるレベルまで性能が高まった」とNICTの隅田英一郎多言語翻訳研究室長。今後、段階的に診察室や病棟に広げるという。

 

 対面によるきめ細かい通訳と常時対応の電話通訳、低コストで利便性の高いシステムを組み合わせ、状況に応じて使い分けることが「言葉の壁」を乗り越えるカギになりそうだ。うまく軌道に乗せられれば、20年東京五輪で「おもてなし医療」を提供できる。

 

2015/1/25 日経新聞 朝刊

http://www.nikkei.com/article/DGKKASDG16H9P_W5A110C1MM8000/