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【保健サービスを輸出する ミャンマーの現場から】(下)日本の成長戦略 皆保険なく高い負担が課題


2014-09-29

アベノミクスの成長戦略に位置付けられた医療分野の国際展開。新たな市場として脚光を浴びるミャンマーでも日本の存在感を高めようと、乳がん検診などの事業性調査が実施された。2011年の民政移管後、ミャンマー政府は保健医療分野の予算を増やしており、関係業界が熱い視線を送る。

◆狙いは市場開拓

 市場開放で活気づく最大都市のヤンゴン。首都は06年、北へ約320キロのネピドーへ移ったが、国立や民間の病院が集まっている。

 産婦人科を中心とする国立ヤンゴン中央婦人病院は植民地時代の1897年、英国によって設立。何度か病棟を増やし、「記念すべき建物だが、老朽化が心配だ。もう新しい建物を建てる場所がない」とチョー・シュウェ院長(57)。

 同病院で昨年12月、日本の経済産業省の補助による乳がん検診が行われた。富士フイルム(東京都港区)のデジタルX線画像診断システムを使い、受診したミャンマー人女性203人のうち3人が乳がんと診断された。実施したのは、同社やコンサルティング会社のメディヴァ(世田谷区)などで構成する事業体。検診の仕組みを普及させることで機器の市場を開拓するなどの狙いがある。

 調査では、停電が頻発するうえ、温度・湿度の管理が難しいため、使える機器が限られるなどインフラの課題が浮上。しかし、ミャンマー保健省から公的乳がん検診の普及に向け、協力を要請される成果もあった。広く実施できれば市場は一気に拡大する。だが、「乳がん検診までお金が落ちて来るのはかなり難しい」(メディヴァ)のが実情のようだ。

◆「全国民に医療」目標

 公的な保健医療サービスは軍事政権下で整備が滞り、施設や機器の老朽化が目立つ。富裕層はタイやシンガポールで医療を受け、ヤンゴンでは民間の医療施設が増えている。

 主に中産階級の患者が「設備が新しい」などの理由で利用する市内の民間病院の待合室。主婦のタン・エイさん(50)は「治療費が高くつくので困っています。これ以上、娘に負担をかけたくない」と涙ぐんだ。30年来の足の腫瘍が痛み出し、病院近くの工場で働く娘の勧めで南東部のモン州から出てきた。提示された額をめぐり、病院側と交渉中だ。

 日本の国民皆保険のような制度はなく、患者の経済的負担は大きい。民間の医療費は医療施設や医師ごとに決まり、保健省傘下の公的病院の診療費は無料が原則だが検査や手術などは患者が負担する。貧困層でも混み合う公的病院を避けて民間を受診する人が少なくない。医療従事者も不足し、農村部では助産師が公衆衛生を担っている。

 民政移管後、政府は保健医療予算を増やし、総支出に占める割合は2011年以前の1%前後から14年には3・5%に増加。軍事政権下で途絶えていた海外からの援助も増え始め、状況は好転している。政府は今年4月、全ての人々が基礎的な保健医療サービスを受けられる「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ」達成へ方策を発表した。財源の確保に日本のような制度を導入するのか、他の仕組みか、世界が注目している。(寺田理恵が担当しました)

◇                   

 ■医療費はコストシェアリング

 公的医療サービスは無料か、有料か-。

 医療施設は保健省傘下の公的病院が主体で、農村部では農村保健センターや末端のサブセンターに助産師らが配置されている。英国の国営医療サービスの流れをくみ、「診療費は無料」が原則。しかし、医師は「払える患者は払う」。受診者は「出産するために寄付をしなければならない」と不安を漏らす。詳しく尋ねると、実際は費用がかかる。軍事政権下で財源不足から「コストシェアリング」方式が導入され、検査や手術などのコストは患者負担。薬が不足していれば患者が購入するという。

 

2014.8.26 08:00 msn

http://sankei.jp.msn.com/life/news/140826/bdy14082607360001-n1.htm