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ニュース: 中東の成長、生活習慣病も拡大 日本は医療に商機


2013-09-19

 中東に日本の医療関連企業が熱い視線を注いでいる。経済成長や人口増に伴い医療ニーズが拡大。商機も膨らむが、米国やドイツのメーカーが先行する欧米勢の「牙城」でもある。出遅れ感のある日本勢は、切り崩しに向けどこまで巻き返せるのか。

「医療分野の人材育成や乳がん検診装置の導入、日本の高度医療技術の導入で協力を進めたい」。安倍晋三首相は8月28日、カタールのタミム首長との会談で呼び掛けた。

 首相が同国やクウェート、バーレーンを歴訪したのは、石油・天然ガスの確保だけが目的ではない。カタールには約300人の企業・団体首脳が同行。目を引いたのは、参加社数の2割を占めた医療業界だ。東芝メディカルシステムズ、日立メディコなど医療機器メーカーや武田薬品工業に第一三共、エーザイといった製薬大手の幹部が顔をそろえた。

 中東を有望市場とみるのはなぜか。一つには生活が豊かになり、生活習慣病が問題になっているからだ。国際糖尿病連合によると20歳以上の罹患(りかん)率はクウェート、サウジアラビアなど4カ国が20%を超え世界の上位10カ国に入る。「医療ニーズは先進国と変わらなくなっている」(医療機器大手)という。

 

 アラビア半島の夏は外気温がセ氏50度にも上る。空調のきいた屋内で終日過ごし、移動は車で済ませる人が多い。結果、運動不足に陥りやすい。飲酒がご法度のイスラム圏では甘みへの要求が発達するのか、伝統的なお菓子は甘さが強い。紅茶を飲むときも、浸した角砂糖をかじりながらといった具合だ。ファストフードも人気だ。

 もう一つは、石油・天然ガス収入を背景に、世界でもとりわけ富裕な顧客であることだ。1人当たり国内総生産(GDP)はカタールが世界第2位。アラブ首長国連邦(UAE)やカタール、サウジなどが競うように高度医療技術を導入する医療都市を建設し、保健分野への支出も右肩上がりだ。

 加えて、人口増加のペースが速い。国連推計では、湾岸協力会議(GCC)を構成するアラビア半島の6カ国の人口は2020年に計約5500万人と12年比で17.1%増える。アジア全体(7.7%増)、世界(9.0%増)と比べても市場拡大の勢いが強い。

 需要があるのはアラビア半島の豊かな産油国だけではない。戦後復興を見越してイラクに売り込みをかける企業もある。核開発問題で米欧の経済制裁を受けるイランは、米企業の存在感が低く、人口約7500万人の大市場だ。

 既にテルモや日本光電、富士フイルムなどがUAEのドバイに拠点を構え、中東・アフリカに販売攻勢をかけている。富士フイルムはUAEの国立病院すべてを結ぶ患者情報データベースシステムを受注。年内に稼働させる。

 日本勢が苦心するのが、中東での知名度の低さだ。高い技術が強みでも中東では後発組。米ゼネラル・エレクトリック(GE)、独シーメンス、蘭フィリップスなどが既に浸透し、高いシェアを握る。「落札間際の案件を、米政府筋の後押しを受けた米企業にさらわれたこともある」。ある日本企業は歯がみする。

 こうした中、首脳外交を重視するとされるアラブの君主国で、首相の訪問やトップセールスは現状打開の援護射撃となる。同行した日本光電の荻野和郎会長は「欧米勢の強い中東市場で、日本が本腰を入れていることが伝わる」と歓迎する。もっとも、首相が訪れたから商談がまとまるかと言えば「そんな簡単なものではない」(同行企業の首脳)のが実情だろう。

 

 中東の医療施設は設計段階から欧米系のコンサルタントが関わることが多いとされ、割って入るのは簡単ではない。欧米勢が牙城を死守しようとするのは必至だ。医療機器でも、品目によっては輸出額で中国や韓国が日本を上回っている。官民を挙げて環境整備を急いでいるのは、日本だけではない。

 

日経新聞 2013.9.18

http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM16026_X10C13A9000000/?df=2